2018年9月21日

親子で富士山登頂を達成するためのノウハウ


最終目標の富士山登頂へ向けて、「asobi基地やまのぼり」各イベントでは、以下のような内容を意識しつつ、練習を重ねていきます。

子どもへの声のかけのポイント

1. できていない事実を指摘するのではなく、できたことを褒める

親子でのトレッキングでは、親から子どもへ「もうちょっとだから、頑張ろうよ」など、奮起をうながす声かけがされているのを、しばしば見かけます。

ところが、子どもが素直に受け入れるケースは少なく、ときには “なんで頑張らなくちゃいけないんだ” と、言葉や態度など様々な手段で、反発を見せる子もいます。

これは、言われる子どもの立場になって考えてみると、理由がよくわかります。

「頑張ろう」とは、そのまま受け取れば「今はまだ頑張っていない」あるいは「頑張りが足りない」、だからもっと頑張ろう、という意味になります。

まだ幼児や小学生ですから、できていない事実を指摘されれば、やる気を無くす子は、多いでしょう。

「頑張ろう」を使わない声かけ

しかしながら、私たちは本当は、できていない事実を指摘したいわけではありません。

もう高度500mも登ったよ!よく頑張ったね。もうちょっとで頂上だね(だからもう少し頑張ろうよ!)」

と言いたいのですが、言葉足らずで「頑張ろう」になってしまうのではないでしょうか?

この場合はもちろん、「頑張ろう」を言うよりも、その前の部分、「できたこと」について言及し、子どもが自覚できるようにうながすほうが、子どものよい応援になります。

「頑張ろう」という言葉を使わずに応援する方法を意識してみましょう。

 

2. トレッキングの魅力を見つけられるようにサポートする

苦しいのを我慢できるから偉いわけではない

「できたことを褒める」のと同じくらい大切なのが、トレッキングの魅力に気づくように、子どもをサポートしてあげることです。

道中は、疲れたり、息が切れたり、身体的・精神的に苦しい場面も多々あるわけですが、これを我慢できたから凄いわけでもなければ、文句一つ言わずに登ったから偉いというわけでもありません。

実際、富士登山においては、我慢するよりも、楽に登り続けられるペースを見つけられるほうが重要ですし、文句を言わないよりも、素直に自分の状況を周囲に伝えられる方が、高山病を避けられる可能性が高まります。

トレッキングのどこに魅力を見出すかは人それぞれ

オトナもコドモも、人それぞれ、どこかしらにトレッキングの楽しみを見つけて、苦しさと付き合っていくことになります。

たとえば、アスレチック感覚で、大きな岩や、身長ほどもある木の根などの障害物を乗り越えて進むのが楽しい、という子もいます。

もっと体力自慢の子は、ストイックに、自分の身体能力の限界に挑戦したい、という場合もあります。

苦労して登ってきたら、胸が空くような景色が見られて、「この先に何があるんだろう」と探求心をモチベーションにする子や、シンプルに、友人たちと一緒に、先を争い、遊びながら登るのが楽しいという子もいます。

必ずしも、山頂にたどり着くことだけが、トレッキングの楽しみではないのです。

客観的になれるようにサポート

ところが、肉体的・精神的な苦しさが先に立ってしまうと、こうした「楽しみ」まで、なかなか視野を広げることができない場合があります。

これをサポートしてあげるのが、親の重要な役割になってきます。

たとえば、登る速度が遅いことを気にしている子には「自分のペースを作れて、えらいね」(富士山ではこれができないと登頂不可能)と声を掛けてあげる。

すると実際、勢いに任せてゼイゼイ登って、休憩時間が長くなってしまう子を尻目に、中盤以降は先頭集団で登り切り、自信をつけられるケースがあります。

なんで山登りなんかしているんだろう、とつまらなそうにしている子には、虫や野鳥などの生きもの、きれいな草花、登ったからこそ見られる風景、いつもと違う静けさや澄んだ空気……などなど、何か興味を持ちそうなものがないか、注意を向けられるようにしてみます。

 

3.「速さ」よりも「安全」が偉いと伝える

身体能力や、体力に自信がある子が集まると、我先にと争って、明らかにオーバーペースで進んでしまうケースがあります。

これも楽しさの一つなので、尊重してあげて、無理に制止する必要はありません。

が、トレッキングでは、速く登れる(下れる)人が偉いのではなく、「自分のペースを見つけて、バテずに進める人」「滑ったり、転んだりせずに、安全に進める人」が偉いという事実を伝えましょう。

なぜなら、順調に行って所要10時間前後(往復約15km・高低差1,500〜1,800m)となる富士登山では、勢いに任せて登って降りてくることは、不可能だからです。

バテてしまったり、身体を痛めてしまったり、怪我をしてしまったりすれば、即リタイアとなります。

「この山ではいいけど、富士山では通用しないよ。なぜなら〜」と、たとえその場ではわかってもらえなくともよいので、話をしてください。

ペースのゆっくりな子に、「ゆっくりなのは悪いことではなく、むしろ良いこと」という事実を伝える意味でも、とても大切です。

また、下りでは、「1回も転ばずに降りられたら100点!」というゲーム形式にすることで、安全に下山する練習ができます。

 

4. 登山マナーがある理由を伝える

トレッキングにおいては、いくつか知っておかなければならないマナーが存在します。

重要なのは、マナーを教えることではなく、なぜそのようなマナーが存在するのか、理由を理解してもらうことです。

あいさつをする

いつ怪我をしたり、遭難したりするかわからない山中で、頼りにできるのは、たまたま居合わせる他人だけです。

助け合いの精神を持ち、同じ山を登る仲間に対しては、必ず挨拶をします。

(なお、登山客が圧倒的に多い富士山では、全員と挨拶をしていては疲れてしまうほどなので、それほど頻繁に挨拶は交わされていません。ただ、目が合ったときや、相手から挨拶をされたときには、元気に応じましょう)

無理やり抜かさない

狭い山道では、自分のほうがペースが速いからといって、追い越しを掛けるのは危険です

。自分がバランスを崩して怪我をするだけならばまだしも、相手を驚かせ、怪我をさせてしまうかもしれません。

先に行きたい場合は、必ず声をかけて、道を譲ってもらいましょう。

道を譲り合う

狭い山道ですれ違うときは、自分のペースと、相手のペース、前後の退避スペースの広さなどをよく見て、邪魔にならない場所で立ち止まり、道を譲ります。

背後からくる人のほうがペースが速く、追いつかれそうな場合は、ついでに先に進んでもらいましょう。

木の枝や石等を投げない

山では、木の枝や石など、重さのあるものを、絶対に投げてはいけません。

目の前には誰もいなくても、転がり落ちていって、どこで誰に当たってしまうかわからないからです。

足元の小石を落とさないように細心の注意を払う

岩場や、ガレ場など、足元に小石が多く、転がり落ちやすい山では、登ったり降りたりするときに、足元の石を蹴飛ばして落とさないように、細心の注意を払います。

もちろん、斜面の下にいる人に、怪我をさせないためです。

逆に、そういった危険箇所では、自分も落石に当たらないように十分に気をつけ、他の登山者と距離をあけるように意識します。

 

富士山登頂を目指すための、山歩きのテクニック

asobi基地やまのぼりの各種イベントは、最終目標である富士登山のための練習という位置づけです。

本番の富士山登頂を成功させるために、以下のような山歩きを学び、実践する経験を積みます。

歩き続けられるペースを見つける

往復約15km・所要10時間前後の長丁場となる、富士登山では、登山ペースがとても重要になってきます。

親子トレッキングでは、なるべく、日の出とともに出発して、日没前に下山したいためです(ヘッドライトを頼りに、暗闇を歩くとなると、難易度が上がります)。

所要時間が大幅に増えてしまう最大の原因は、長時間の休憩です。

すなわち、良いペースを作るためには、休憩時間を短くする必要があります。

そのかわり、休憩の回数は増やしても問題ありませんし、歩くペースも、蟻が歩むほどゆっくりで構いません。

勢いに任せて登って、バテてしまったり、足を痛めてしまったりすると、休憩時間が長くなり、所要時間が天井知らずに増えてしまいます。

バテずに歩き続けられるペースを見つけ、体に覚えさせましょう。

休憩は短く5分にとどめる

前述のとおり、休憩は、短時間を頻繁に取るスタイルが正解です。

水分補給や、エネルギー源・糖分・クエン酸などの補給をする意味でも、積極的に休憩しましょう。

1回あたりの休憩時間は5分以内、どんなに長くても10分以内にとどめます。

息が切れたり、激しい運動で筋肉が酸欠になったり、といった疲労は、少し休めばすぐに回復するため、数分の休憩で十分なのです。

(富士山でも、7合目・8合目あたりから、酸素が薄くなり、ちょっとした運動で息が上がり、足を中心とする筋肉が強い疲労を感じるようになりますが、同様に数分の休憩ですっかり回復します)

富士登山に向けて、理想のペースを覚えるためのほかに、持続的な運動で温まっていた体を冷やさないようにする意味もあります。

せっかく掴んだペースがリセットされてしまい、また体が温まるまでのあいだ、怪我のリスクが高まります。

また、汗をかいているため、体温調節がうまくいかず(体が冷えすぎてしまう)、体調を崩すきっかけになるケースもあります。

呼吸が重要!息は「深く吐き切る」を意識

富士山では、標高3,000mを越えてくると、酸素濃度が薄くなり、誰しも、目に見えて息が上がりやすくなったり、軽く頭痛がしたりします。

悪化すれば、高山病になります。

症状を軽く済ませるには、呼吸が大切です。

私たちは普段、意識をしなければ、浅い呼吸を繰り返しています。

登山のときは、体に酸素を充分に行き渡らせるため、深呼吸のように、大きく息を吸ったり吐いたりしながら登ると、体が楽です。

コツは、息を大きく吸うよりも、息を深く吐き切ること。

息を深く吐き切れば、自然にたくさんの空気が肺に取り込まれます。

不摂生が心配なパパ・ママ:体重を少しでも減らし、遅くとも1ヶ月前から毎日のストレッチを

長丁場の登山では、どんなに気をつけていても、バランスを崩して手をついたり、足を滑らせて踏ん張ったり、という場面が、必ず1回や2回はあります。

その際に、重すぎる体重は、そのまま身体への負荷となり、また、体が硬ければ、怪我に直結します。

少しでも怪我のリスクを減らすために、肥満気味が気になる方は体重減少に努め、毎日のストレッチを習慣にして、柔軟性を高めておきましょう。

須走ルートの下山道「砂走り」。駆け下りるには脚力が必要。足を傷めてしまうと立ち往生も

また、登りは息が切れるだけですが、下りは、膝下の筋肉系に、過大な負荷がかかります。

息切れは、休憩すればすぐにおさまりますが、筋肉系の疲労は、休んでも回復しません。

富士登山の下りでは、靴ずれや、膝・ふくらはぎ・足首などの極度な筋肉疲労・炎症で、動けなくなって立ち往生している人をしばしば見かけます。

シリーズ開催するasobi基地やまのぼりで、長丁場の急勾配を下りられる身体になっているか、確認してください。